よくわかる遺品整理の必要性
E抗体をつくるのがB細胞というリンパ球なんだが、B細胞にどんな抗体をつくらせるか指示しているのがヘルパーT細胞というリンパ球なんだ。
これには善玉と悪玉があって、善玉はウイルスなどに対する抗体をつくらせ、悪玉はアレルゲンに対する抗体をつくらせる。
この悪玉が増えると、花粉症になりやすいといわれていて、これは食生活や遺伝子の違いが原因ともいわれてるんだ。
次はそれぞれの行動パターンの違いだな。
たとえば、車の通行量の多いところに行った、バイクに乗ったり、無意識に花粉にさらされる行動をとることによって発症が早まる3つめは食生活だな。
動物性タンパク質をとるとアレルギーが起こりやすいといわれているんだ。
いずれも仮説の段階だが、こうした理由によって発症に個人差があるといわれてるんだよ」たしかに花粉症には個人差がある。
それはいいとして、ぼくの花粉症歴は14年にもなるのに、なぜ治らないのだろう。
究極の治療法なんてないのだろうか。
ぼくがたずねると、博士は言った。
「基本的には治らんよ。
諦めなさい。
病院での治療はすべて対症療法で、根治するわけじゃないんだ。
子供のときに発症すると、60歳から70歳になるまで治らないと思った方がいい。
究極の治療法はひとつ、さっきも言ったように、花粉症になるのは花粉に触れるからなので、逆に花粉が飛んでないところに行けば花粉症も治るということだよ」「つまり、ぼくの場合は沖縄に住めということですね。
う〜ん、いいアドバイスだけど、いまのぼくには無理だな。
ところで60歳から70歳までというのはどういうこと?」「うん、40歳ぐらいからリンパ球の反応が鈍くなって、60歳から70歳になると、アレルゲンにあまり反応しなくなるらしい。
もっとも食生活が変わるからという説もあるんだが、いずれにしろ、年をとると自然に治るらしい」「でも、70代までつづけば、一生治らないのと同じじゃないですか」「そのとおり」博士はにやにや笑っているが、ぼくにはとてもショッキングだった。
いってみれば不治の病ではないか。
考えただけでも憂謹になってくる。
「最近は花粉症が低年齢化していると聞きます」ぼくは話題を変えた。
「全般的には17%くらいの人が花粉症といわれているが、10代では5〜17%の人がEの抗体を持っているようだな。
つまり彼らはスギ花粉症の予備軍ということだ。
このうち2%が発症しているそうだから、4〜17%の若者が花粉症ということだ。
う〜ん、それにしても、これは多いね」「スギとヒノキの花粉は構造が似ています。
それなのに、どうしてスギ花粉症が多くてヒノキ花粉症が少ないのですか」「ああ、理由は簡単だよ。
ヒノキの花粉が少ないからだ。
ヒノキはスギに遅れて植林されたからね。
ヒノキの成長につれて、今後、ヒノキの花粉症が増えるだろうね。
ヒノキの花粉が飛ぶのは4月から5月だから、これからの花粉症は、2月頃から5月初旬まで症状が続くということだな。
もっともそれだけならいいが、スギ花粉症の人は他の花粉にも反応しやすいから、1年中花粉症という人も増えているんだよ」そういえば、スギ、ヒノキ、カモガヤ、ブタクサのすべてがアレルゲンのため、年に10カ月以上も花粉症で苦しんでいる人を知っている。
たまたまぼくが沖縄に行くと花粉症肋の症状が消えると話したのを聞いて、数年前に沖縄へ移住してしまったが、10ヵ月も続けば、おそらくぼくだって真剣に考えただろう。
「花粉症は治らないとしても、症状を軽くするにはどうしたらいいんですか」「何度も言うようじゃが、アレルギー反応はアレルゲンに接触する量と時間に比例して症状も重くなる。
つまり、アレルゲンとの接触を減らせば、花粉症も減るということだ。
要するに、花粉の季節はカッコ悪くてもマスクやメガネをかけろということだよ。
花粉症の症状が出ていない人でも、花粉が飛ぶ季節はできるだけマスクをしたほうがいい。
それが「花粉症を予防する最良の方法なのだよ」というわけで、結局ぼくがやっているように、徹底的に花粉を避けることが、単純でもすべてに勝るようである。
さて、ぼくはこれまで、花粉症はスギ花粉が原因で起こるものと信じて疑わなかった。
というより、それ以外に考えたことがなかったのだ。
ところが、そうじゃないという人がいる。
これが意外に多い。
それも知的な人たちに言われるのだから、ぼくは驚いた。
圧倒的に多いのは、大気汚染やディーゼル排気物質が原因という説である。
もうひとつは、人間の体から寄生虫がいなくなったことがアレルギーをひどくしているという説だ。
そのほかにも免疫力の低下説や、スギ花粉よりもダニだという人もいた。
そのほかに遺伝子説というのもあった。
つまりアレルギー体質は遺伝的に決まっているというものだ。
これらの中でもっとも広く、固く信じられているのが大気汚染原因説だ。
俗説の中の俗説である。
冒頭でも述べたように、花粉症はアレルゲンに触れることで起こるアレルギー反応だ。
DEPが花粉症のアレルゲンになるとは思えない。
それにしても、免疫が自己か非自己かを区別するのは、自分の体を構成するタンパク質かそうでないかを区別することであり、アレルゲンは基本的にタンパク質であるはずだ。
しかし、DEPは化学物質を含んだ炭素微粒子なのだ。
それがなぜアレルゲンになるのか、ぼくには不思議だった。
ぼくは関東平野の西に住んでいる。
一キロ4方に幹線道路がないから、都会の喧喋とはあまり縁がない。
たまにトラックが通ることもあるが、細い田舎の道だから、ディーゼル微粒子(DEP)をまき散らすような大型トラックはまず通過しない。
もちろん近所には煤煙を出すような工場もない。
最近はあちこち造成されて住宅地にかわったが、10年ほど前までは、クヌギやカシ類の森があちこちにあって、大気汚染やDEPなど知らずに暮らしてきた。
それでもぼくは花粉症になった。
いまさらディーゼル排気物質が原因といわれても、ぼくには信じられないのだ。
スギ花粉抗原だけをマウスの鼻に滴下した場合と、スギ花粉抗原をDEPと混ぜて滴下した場合をくらべると、混ぜたほうがE抗体の産出量が多くなることを証明したのであした。
日本で「スギ花粉症」と名付けたのはT歯科大学のS医師(当時)だった。
もっとも象牙の塔内だけのことで一般にまで知られることがなかった。
それが口端にのぼるようになったのは1979年以降に花粉症が社会問題になってからだ。
その頃、K総合病院のK院長(当時)は、日光には昔からスギはたくさんあったのに、なぜ今になって花粉症が増えたのかと思い、自動車の排ガスとの関係を疑って疫学調査をした。
そして、住民のアレルギー反応の増加は、車両の通行量と関連があることを発見する。
大通りに面した地域、道路が狭くて車が少いがスギが多い地域、そしてその中間の地域を調査したところ、花粉症の発症率は車両の通行量が多い地域ほど高かったのだ。
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